2020.

11.19

2021.03.31 up date
REPORT

地域資源を活かした空き家再生 ゲストハウスから始まる関係人口 STAND TOKYO

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日時
2020年11月19日 (木)

11月のSTAND TOKYOでは、茨城と石巻で空き家の活用を通して、地方での場づくりやコミュニティ形成に挑戦する二人と共に、地域資源の活かし方を考えます。

 

概要

▼茨城:加藤雅史設計事務所の加藤雅史さん
県北ローカルベンチャースクール2018に参加し優秀賞を受賞。
その後、水戸市のみらい不動産の関さんとともに、ゲストハウス「ラグナロッック」を開業。2020年6月に、常陸多賀駅すぐの物件をリノベーションし日立マイクロシェアオフィス「晴耕雨読」を運営。空き家や中古不動産に注目し、リノベーションすることで地域資源の資産価値と地域でのコミュニケーションを生み出しています。実際に、茨城で動いてみて、また晴耕雨読の場を持ってみて、実際何が起きているのかを伺ってみます。

 

▼石巻:合同会社 巻組の渡邊京子さん
「場所づくり」「人材プラットフォームづくり」の両輪を回して好循環を形成することを柱に、石巻市内に限らず賃貸住宅の管理運営(シェアハウス、ゲストハウスの運営等)を行っています。東日本大震災後の課題の一つが、移住者のための住宅施設の不足。そこから古い空き家のリノベーションを始め地域に根ざしたいと思う人々の居場所をつくることから渡邊さんは始めました。活動の拠点ができることで、働く場所やコミュニティができる流れを石巻でつくった巻組がいまどんなことをしているのかを伺います!

(巻組 https://makigumi.org/)

 

ダイジェスト

レポート

▼加藤雅史設計事務所 加藤雅史さんの活動

◆泉町仲通りの活性化

水戸市泉町にある飲み屋街・泉町仲通り商店街。最盛期には34件並んでいた店舗は、加藤さんが活動を開始したころには9軒にまで減っていたそう。明かりが消え、空き店舗が増えてしまった通りを活性化するために加藤さんは活動をスタートさせます。

結果として、泉町仲通りに新しく5店舗を誘致することに成功した加藤さん。約3年間の活動の後は、商店街の自立を促す意味もありプロジェクトを卒業します。現在、仲通り商店街は町内会が主体となりイベント等を継続しているそうです。

 

リノベ★マーケット

仲通り全体を舞台に行うイベントの日だけ、イベント出店者に空き店舗を使用してもらい、飲食の提供やワークショップを行うプロジェクト。イベント当日は通りに並ぶ全ての店舗が埋まり、街が活気付きます。

門看板に明かりを灯すクラウドファンディング

通りの入り口にある門看板は仲通りのシンボルでしたが、震災で壊れ、点灯しなくなって以降そのまま修繕されずにいました。加藤さんはクラウドファンディングで資金を集め再び看板に明かりを灯す事に成功します。

 

◆ゲストハウス ラグナロッック

水戸市の空き家を利用しゲストハウス「ラグナロック」をオープン。お金をかけずとも空き家の活用ができる好例になった、と加藤さん。ラグナロックの今後の課題として考えているのは、コミュニティの形成だそう。

「現在、ここにはプレイヤーは居ないため、コミュニティが生まれず、ただの宿になってしまっている」と課題を語りました。

◆日立マイクロシェアオフィス 晴耕雨読

交流施設を作ろうと、2020年には日立市でシェアオフィス「晴耕雨読」をスタートさせた加藤さん。コミュニティを生む場にすべく、オープン前のリノベーション中にも、建物の解体イベントや塗装イベントを行いました。

加藤さんは当初、起業家がオフィスとして使うことを想定していたそうですが、現在ではコロナ渦の影響もあり、会社員が資格勉強に利用する他、高校生が塾がわりに使用する例も多くみられるとの事です。

今後の展望は、「日立市多賀エリア ワーケーション特区計画」と加藤さん。

「地域活動をしたい人にとってワーケーションは非常に良いキーワード。地域を巻き込んで活動してゆきたい」と話します。

 

▼合同会社 巻組 渡邊享子さんの活動

 

◆条件の悪い物件の大家業

宮城県石巻市で、デザイナーや建築士と共に「巻組」を運営し、賃貸住宅の管理運営を行う渡邊さん。巻組の仕事は、空き家となっている「条件の悪い不動産の大家業」だと語ります。

不動産のネガティブがポジティブ要素になる

巻組では、不動産を選ぶ視点である3P(立地・家賃・間取り/設備)の、一般的な条件からは大きく外れた、「条件の悪い物件(立地→最悪 家賃→無料に近い  間取り→最悪/古い)」に特化し買い上げ、リノベーションを行っているそう。

一聞して、ニーズが殆どない物件を購入しているようにも感じますが、一般の借主にはネガティブな要素でも、「アーティストたちのニーズにあっている」と渡邊さん。

 

「立地が悪いから、人がおらず静かで音をだしても迷惑にならない。人口が減少している地方なら広い場所も確保できる。建物が古いから、汚しても壊れても大丈夫」

アート人材向けの物件では、上記のネガティブ要素はすべてポジティブに転換できるのだとか。

 

巻組のターゲット

クリエイター向け物件に注力する巻組ですが、従来ターゲットとしてイメージされやすい、「リモートワークでどこでも働くことができるフリーランスのクリエイター達」だけでなく、「アルバイトをしながらアーティストをめざすが続けられなくなった」等の背景をもつ、所得の低い(=まだ売れていない)クリエイター達もターゲットに据えていることも特徴です。巻組では、駆け出しクリエイターを石巻市に受け入れることで、双方にとっての活動の幅が広がると考えています。

◆クリエイティブハブ

シェアハウスの一角をこれから目が出るクリエイターに一定期間無料で提供。アーティストに生活の場と製作の場を提供し、田舎にクリエイティビティを育てるプロジェクト。月に1回入居するクリエイターの作品発表会があり、地域に住む人たちは、自分たちが持つ物資をクリエイターに提供して関わりを持ちます。

この取り組みで、3ヶ月の間にギフトエコノミーで繋がる280名もの関係人口を生み出す事に成功。

「応援で地域のクリエイティビティが育つ」そう渡邊さんは語ります。

 

地方での不動産活用の課題として、渡邊さんは、空き家など不便な物を前に、自分の力でどうすれば快適にすることが出来るか、想像して解決出来る人間がいないのが問題だと捉えているそう。

「自分にとって、どういうライフスタイルが快適か、みんなが考えるようになれば不動産活用の幅も広がると思う」と話しました。

Q 地域にワーケーション以外で関わる方法は何でしょうか?

 

加藤さん:

一歩、なんでもいいから参加することが大事だと思います。イベントに参加するでもいいし、気になった物件があったら調べてみるだけでも良い。一歩前に進むことができれば、いくらでも地域に関われる気がします。

 

渡辺さん:

地方は人を求めていると思っていて、アンテナを張ればたくさんのイベントや企業は見つかるはずです。

でも、最初は観光で関わるだけでも良いかもしれないと思っています。私は、最近では一度旅行で訪れた後、リピートして通う町がいくつか出来ました。町に関わるのが楽しいという、感度が合う場所を見つけるのがとても大事だと思います。

 

登壇者紹介
加藤雅史
CANVAS合同会社 代表社員 加藤雅史建築設計事務所 代表 1977年茨城県水戸市生まれ。二級建築士。宅建士。 16年間木造住宅関連の会社にちょいちょい転職しながらで生きてきたものの、社長と仲が悪くなり設計事務所として独立。「自分が楽しいこと」をしていたら空き家の再生ばかりしていた。「寂しくなった飲み屋街の再生」→「サードプレイスの運営」→「ゲストハウスの運営」→「創業スクール・ビジコンの運営」→「シェアオフィスの運営(今ココ)」。現在は日立市多賀エリアを勝手に「ワーケーション特区」にするべく悪だくみ中。
渡邊京子
合同会社 巻組 代表社員 2011年、大学院在学中に東日本大震災が発生、研究室の仲間とともに石巻へ支援に入る。そのまま移住し、石巻市中心市街地の再生に関わりつつ、被災した空き家を改修して若手の移住者に活動拠点を提供するプロジェクトをスタート。2015年3月に合同会社巻組を設立。地方の不動産の流動化を促す仕組み作りに取り組む。会社経営のかたわら、一般社団法人ISHINOMAKI2.0理事、東北芸術工科大学講師も務める。2016年、COMICHI石巻の事業コーディネートを通して、日本都市計画学会計画設計賞受賞。2019年、日本政策投資銀行主催の「第7回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」で「女性起業大賞」を受賞。