2020.
12.17水
茨城で働くをイメージする! STAND TOKYO
地方への移住やUターンを考えた時、避けては通れない「仕事」の問題。
地方には面白い会社は存在しないのか?現在、どのような働き方があるのか、地方での「働き方の今」を、「働く」にまつわる仕事に関わるお二方に伺います。
▼概要
◆成瀬 岳人さん
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチ事業部 事業開発統括部 部長 事業構想士(MPD)・総務省委嘱テレワークマネージャー
業務コンサルタントとして複数プロジェクトに従事した後、ワークスタイル・コンサルティングサービスを立ち上げ、複数社の労働時間改善やテレワーク導入を支援している成瀬さん。テレワーク時代を迎えた今、様々な働き方を研究する立場にもなっています。 東京でのキャリア形成に加えて、地方の働き方や2拠点生活のあり方にも知見を持つ成瀬さんに、来年度を見越した就職活動の仕方や、働き方の選択肢について伺ってみます。
ワークスイッチ http://work-switch.persol-pt.co.jp/
◆鈴木潤さん
いばしごと 編集長
茨城県日立市出身で現在は、東京・茨城の仕事を軸にデザイン業務を行うインクデザイン合同会社の代表社員の鈴木さん。茨城県の移住定住サイト「Re:BARAKI」のディレクターとしても活躍しています。
2019年にはコミュニケーションの可能性を探る一つの手段として、茨城県内の企業の思いを伝えるメディア「いばしごと」をオープン。移住定住事業にも関わる一方、ライフワークとして「仕事」についてのメディアを運営する鈴木潤さんから、茨城県の企業や仕事の始め方を伺います。
いばしごと https://ibashigoto.net/
ダイジェスト
▼いばしごと編集長 鈴木潤さんのお話
◆いばしごと
「いばしごと」は茨城にある企業の求人に特化した採用サイト。デザイナーとして普段は東京で活動する鈴木さんが、クリエイティブの力で採用のミスマッチを解決すべく立ち上げたメディアです。
演出は無し、記事は赤裸々に
取り上げられる求人記事の特徴は、編集長である鈴木さん曰く「ひたすら長い」事。通常の求人サイトでは、求めるスキルや待遇などの記載がメインのコンテンツとなりがちですが、いばしごとでは、会社の目指す姿や、今取り組んでいる事、行き詰まっている事まで、取材された内容がこと細かに綴られます。
「求人記事は、その会社の良い面だけで無く、悪いところや、苦労している点・行き詰まっている事も載せるようにしています」
良いところばかりを見せて、応募する人をミスリードしないように気をつけていると鈴木さん。会社の状況を赤裸々に見せて、それでも入社してくれる人が、本当の戦力になると思うと語ります。
熱い気持ちに地方も東京も関係無い
鈴木さんは、茨城県日立市の出身。いばしごとを立ち上げたきっかけは、地元で聞いた「地方には良い会社がない」という若い世代の声だったと言います。
「若い世代は『地元には良い会社がない』と上京して仕事に就いてしまう。一方、地方の会社では『若い人たちは東京に行ってしまう』と悩んでいるんです」
実際に、人材を求める県内企業と関わってみた結果、鈴木さんは「熱い想いを抱えていない会社は無い」という結論に至りました。
どんな会社のどの経営者たちも、みな会社への熱い想いを持ち、どうにかしたい会社の未来を抱えていることに気付きます。
「熱い気持ちに地方も東京も関係ないし、むしろ地方の経営者にこそ熱さがある。東京の人は東京を良くしたいとは思わないけれど、地方の人には地元を良くしたいという思いがあるんです」
会社や地元を良くしようと苦しんでいる経営者はたくさんおり、その思いに共感できる人が入社して、それをサポートできる事が理想の姿。しかし、その経営者たちの思いが若者や求職者に知られる機会が無く、採用のミスマッチが生まれていました。いばしごとは、その両者をつなぐ機能を果たすのです。
クリエイティブの地産地消
また、いばしごとが持つ、もうひとつの意味と特徴を教えてくれた鈴木さん。
地方でクリエイティブ人材が育たないという現状をあげ、それに対し、いばしごとでは「クリエイティブの地産地消」というアプローチで解決に取り組んでいる、と運営のポリシーを続けます。
「クリエイターがみんな東京に行ってしまうのは、地元じゃ食っていけないから。地元のライターや写真家が対価をもらう仕組みをつくりたい」
いばしごとの求人記事は、全て茨城県内のライターや写真家によって製作されているのだそう。
地元の企業の取材を地元の人材が行うという地産地消型の取り組み。地方が抱える問題に向き合うためのひとつの方法を、自らいばしごとは提示してくれているようです。
▼成瀬 岳人さん Work Switch編集長/ワークスタイル・コンサルタントのお話
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチ事業部 事業開発統括部 部長事業構想士(MPD)。総務省委嘱のテレワークマネージャーとして、業務コンサルタントに従事後、ワークスタイル・コンサルティングサービスを立ち上げ、労働時間改善やテレワーク導入を支援している成瀬さん。私たちが就職・転職に際して「仕事を選ぶ」以前に考えるべき事柄を、今、社会が迎えている大変革と共に教えて頂きました。
◆仕事の選択以前に意識したい事。社会の大変革について知る
大変革1 テレワーク当たり前時代 二極化するテレワーク
コロナ禍により、急速に進んだテレワークという勤務形態。都市部では緊急事態宣言中、完全にテレワーク勤務だったという企業も少なく無いかもしれません。宣言解除を経て、現在はオフィス勤務とテレワークを状況に応じて使い分ける「ハイブリット型」を導入する企業も増えつつあります。
世の中の変化を受け、変わってゆくことが出来る企業、変わるつもりが無い企業に二極化している、と成瀬さん。このテレワークへの対応で、その企業のスタンスを知ることが出来ると考えています。
「『仕事を選ぶ』というのは、今のところ『会社を選ぶ事』とほとんど同義。どんな会社で、どんな人たちと一緒に仕事をしていくかを判断したい時、『変わってゆくつもりがある会社』であるというのは、重要なポイントとなります」
大変革2 デジタルトランスフォーメーション
「スマホひとつあれば、ビジネス出来るじゃん」という感覚をもつ、デジタル人材の育成が叫ばれる昨今。企業のデジタル化を進めることの重要性は言わずもがなですが、このような人材を、会社としてどのように育てるのかという課題感をもつ企業であるかどうかは、確認すべきポイント。
大改革3 ジョブ型人事制度
ゼネラリストよりもプロフェッショナルが必要な時代を迎え、さらに自立自走が求められるテレワークも普及をはじめました。
ジョブ型人事制度の導入は、学び続けより専門性を高める自己研鑽を社員に求めますが、同時に社員もまた、キャリア形成を自ら考えやすくなる制度だそう。
大改革4 複業とキャリア自律
副業とは、本業での収入にプラスして、サブの収入を得ることを目的に行う仕事。本業ありきで、それに自分が乗っているイメージです。
複業とは、自律的なキャリア構築を目的に、複数の仕事や活動に取り組む事。あくまで自分を中心にキャリアが構築され、本業も含めて自分のキャリアの一つという考え方です。これからのキャリアには、ぜひ「複業」の考え方を採用してほしいと成瀬さんは語りました。
◆新型コロナを変革のきっかけとする変革
2020年は、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、様々な企業が働き方の変革を試みました。テレワークの積極導入やそれに伴う定期代支給の廃止、ジョブ型人事制度の導入などもその一例です。
成瀬さんは、この変革を決定した経営者たちの狙いを「社員一人ひとりが自律する事」だと分析します。また、企業を見る際は、それを言っているだけなのか、言いもしないのか、経営として実践しているのかに注目するのが良いとも話しました。
自律時代に大切な事
自律が求められる時代に働く私たち。今、必要なものは何なのでしょうか。
「自分は何をしたいのか、何を高めたいのか、『自分はこう働きたい』という意思を持つことが何より大切です」と成瀬さん。
誰でも新入社員時代には、そのビジョンがあるにも関わらず、数年経つと、それがなくなってしまう人が多いそう。都心にある大手企業では起こりがちな事なのだとか。
「地域でチャレンジを行う会社」で働く人に、「何をしたいのか」の意思が無い人はいないのではないか、とも加えました。
Q Uターンや転職をする際の、働き方や企業選びのポイントを教えて下さい
鈴木さん:
小さな会社や中小企業の場合、その「会社の色」には、経営に携わる人の姿勢が色濃く反映されます。だから、どんな人が経営者なのかを見た方が良い。経営者が行うSNSでの発信を確認したり等する。そして、経営者の発言や姿勢に違和感があるかないか、共感できるか出来ないかをチェックするのが良いと思います。
成瀬さん:
質問と提案をした方が良いです。選ぶのも選ばれるのもお互い様なので、面談で一方的に答えて採用を待つのではなくて、例えば、「大事にされていることは?チャレンジしていることは?」と質問する。聞くというのは、相手を理解する事に繋がりますから。
もう一つは、提案する事。本気でその会社と働きたいと思うなら提案が出来るはず。
「私はこれが出来る、これがしたい、やらせて欲しい事がある」とかちょっとした事で良いんです。どんなリアクションが返ってくるかにその会社のスタンスが見えるはずです。
最後に
第2部に県内企業による会社紹介のプレゼンピッチがあった12月のSTAND TOKYO。今まさに転職や就職を考えているという方の参加も多かったのではないでしょうか。
今回登壇されたお二人の話に共通していたのは、自分はどうなりたいのかというビジョンを持つことの必要性。
就職する会社を探す際、業務の内容や、制度・ハード面に注目がいきがちですが、自分は何がしたいのか、どんな人たちと一緒に働きたいのかを見つめるところに最初の一歩があるのかもしれません。それが分かった時、企業に共感できるポイントや、一緒に改善していきたい点の見え方さえ変わる事もあるのかもしれないと思います。