2021.

2.18

2021.03.31 up date
REPORT

生産者と語る「ほしいもと関係人口」 STAND TOKYO

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日時
2021年02月18日 (木) 20:00〜22:00
場所

オンライン

参加費
無料

2月のSTAND TOKYOは、茨城の味覚「ほしいも」にフォーカス。産地ひたちなか市では地域の内外に対してどのような場が作られているのか、また、ほしいもを通じてつながる地域や農業との関係にも注目してお話を伺います。

 

ダイジェスト

 

▼ひたちなか市阿字ヶ浦 の生産者

株式会社クロサワファーム 代表取締役 黒澤武史さん

https://kurosawafarm.jp/

 

▼ひたちなか市阿字ヶ浦 のほしいも問屋

株式会社マルヒ 専務取締役 黒澤一欽さん

https://www.maruhi.co.jp/

 

ほしいも学校

http://www.hoshiimogakko.com/

 

▼株式会社クロサワファーム 代表取締役 黒澤武史さんのお話

 

クロサワファームのほしいも

クロサワファームがあるひたちなか市阿字ヶ浦は、茨城県の中央部に位置する海沿いの地域です。水はけが良い、肥沃な土地である事に加え、海から吹く潮風がミネラルを畑に運ぶひたちなか市。この土壌で育つサツマイモは、とても甘いのが特徴。地域をあげて栽培を行なっており、周りにある畑の約9割がサツマイモ畑なのだとか。

 

クロサワファームも、良質なサツマイモが出来る土地の理を活かして、90年ほど前に生産・収穫したサツマイモのほしいもへの加工をはじめました。

ほしいもの加工は、機械で行う事ができないため、工場内でひとつひとつ手作業で作られています。働くスタッフたちは、「サツマイモが好き」という気持ちがとても大きいのだそう。収穫する事も加工も好きだと、やりがいを持って働いてくれていると黒澤武史さんは話します。

 

新卒採用で得た気づき

 

そんなクロサワファームでは、最近新卒採用を開始。それに合わせてインターンシップの受け入れが始まりました。

 

学生の姿を見て、気づきがあったのだと武史さんは語ります。

「サツマイモを実際に手で収穫する体験をしてもらうと、みんな土のついた真っ黒な顔でいきいきとした表情を浮かべるんです。それを見て、こちらも収穫って本能にある喜びなんじゃないかと気づかされるものがありました」

農に関わる仕事

以前は新卒採用は行なっていなかったクロサワファーム。なかなか人が定着しないという悩みがあったそう。現在、武史さんは新卒採用に手応えを感じていると話します。

「新卒採用に応募してくるのはみな農業に興味がある学生ばかり。農業が出来る仕事を探した結果、うちに来てくれているんです」

 

サツマイモを加工し、ほしいもとして生産・販売するクロサワファームですが、創業から変わらず、生産にも携わり続けています。作物を育て、収穫することに魅力を感じ、農家としての面に惹かれる人材との出会いが、会社としての良い循環を生むのかもしれません。

 

ほしいもの認知を広めたい

また商品PRの観点からも「お客様が買いやすい商品をつくりたい」との思いから、クロサワファームでは、数年前から商品パッケージをデザイン会社に依頼し、デザインしてもらっています。

 

最近ではメディアにも取り上げられ、認知度が高まっているほしいもですが、関西ではまだま知られていないのだそう。ほしいもの認知度アップやPRに積極的に取り組んでいきたいと今後の展望をお話してくださいました。

 

▼株式会社マルヒ 専務取締役 黒澤一欽さんのお話

 

マルヒとほしいも

マルヒはひたちなか市にある創業から約60年になるほしいもの卸問屋です。

古くは農閑期を利用して農家が行なっていた仕事だというほしいもづくり。マルヒがある土地のまわりには、最大で1000軒以上のほしいもをつくる農家がおり、それを仕入れ、全国に出荷したのが会社のスタートなのだそう。現在でも、約50軒の生産者と取引を続けています。

 

ほしいも学校

県内では定番のおやつとして名を馳せるほしいもですが、全国的に見ると、まだまだ認知されていないのが現状のようです。

企業としても、地域としても特産品であるほしいものPRに課題を感じていた黒澤一欽さんたちは、地域資源であるほしいもを通じて学び合う活動をはじめます。

 

「本来、ほしいも問屋はライバル同士。正直最初は、ちょっと抵抗はありました。でも、みんなに共通の危機感があったんです」

 

こうして立ち上がったのが一欽さんが理事を務める「ほしいも学校」のプロジェクト。ほしいもに関わる企業や農家、デザイン関係者が集まり構成されるほしいも学校の活動は、2007年に、干し芋の歴史から成分、干し芋と人体、環境との関わりなどがまとめられた同名の書籍を発行するに至りました。

 

ほしいもの可能性が見えた

プロジェクトロゴや、書籍のデザインを行なったのは、プロジェクトのメンバーであり、デザイナーの佐藤卓さん。一欽さんは、佐藤さんがほしいもを見て言った言葉に、ほしいもの可能性を確信したようです。

 

「佐藤卓さんは、ほしいもは見た目や色、大きさもバラバラで、世の中で流行っているものと真逆をいっているのが面白い、と言ったんです。その言葉にほしいもの可能性が見えました」

 

ほしいもでつながる関係人口

また、このプロジェクトは、ほしいものの生産販売に関わる企業や農家以外にも、「ほしいもが好き」だという一般の人が参加しているのも特徴かもしれません。

 

「例えば、地元の楽器店の人だったり、都内に住むデザイナーといった、仕事はほしいもと関係ない人が興味をもって、ほしいも学校に参加してくれました。外から人が入ってくれるたび、何かがピンときて、花開く企画があるんです」と一欽さん。

 

ほしいもまつりや品評会という企画がその一例だそう。「外の人」がキーとなって物事が動いていくという体験は、地域にとっても大きな糧となったそうです。

 

Q 地域との関わり方について、模索していることはありますか?

黒澤武史さん:

インターンシップで学生を受け入れてみて、「ほしいもづくりを体験してみたい」と考えている人はたくさんいるのではないかと気づいたんです。今後はインターンだけでなく、一般の人向けに、ほしいもづくりの生産体験の場を設けたいと思っているところです。

ほしいもに興味をもってくれる人が少しでも増えたら嬉しいですね。

黒澤一欽さん:

ほしいも学校のプロジェクトには、新しい人が関わることで動いてきたという歴史がありあます。定期的に情熱的な人が現れて「大好きなんです!」という力でプロジェクトを動かしてきた。だから、地域を面白くしてゆきたいという気持ちがある人は、ぜひ手をあげて来ていただきたいなと思っています。

 

最後に

しっとり甘い、野菜のおやつ・ほしいも。最近では茨城県外のお店でも目にする機会が増え、県内外にファンが増えつつあります。しかし地方の特産物とその加工品に対して「買って食べてみる」事以外の関わり方を想像することは少し難しく思うのではないでしょうか?

 

今回伺った、生産者と問屋という立場からほしいもに関わるお二方の話には、食べる事以外のつながりの事例が盛りだくさんでした。また、二人がほしいもを通して繋がった人たちから得た気づきが幾つもあったという点も印象的です。

 

この日のSTANDが、地方で関わってみたいことがある・普段関わりのない人たちと繋がりたい、そんな思いを抱いている方にとって、「手をあげてみよう」「意見を請おう」と立ち上がるきっかけになれば幸いです。